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京都地方裁判所 昭和62年(ヲ)750号 決定

異議申立人 豊田機械工業株式会社

同代表者代表取締役 豊田好俊

同代理人弁護士 中嶋邦明

同 若松陽子

同 柳村幸宏

同 増田勝久

主文

京都地方裁判所執行官は、当庁昭和六二年(ヨ)第一一〇四号仮処分申請事件の同年一〇月一三日付け仮処分決定に基づき、異議申立人のため、当庁昭和六二年(執ハ)第三〇七号動産断行保管仮処分執行事件(債権者 異議申立人、債務者 有限会社セイワ工業)について別紙物件目録(一)記載の物件に対する仮処分執行を実施せよ。

理由

一  申立ての趣旨 主文同旨の裁判を求める。

二  申立ての理由 別紙記載のとおり。

三  当裁判所の判断

一件記録によれば、申立ての理由一の事実及び執行官谷口義明が別紙物件目録(一)の物件(以下「本件物件」という。)につき執行不能としたのは、当庁昭和六二年(ヨ)第七七三号仮差押申請事件(申請人 長尾保行、被申請人 清和工業株式会社)の昭和六二年七月一五日付け仮差押決定に基づく仮差押執行(当庁昭和六二年(執ハ)第二一六号動産仮差押執行事件)により、昭和六二年七月二四日すでに本件物件が同執行官の占有するところであることを理由とするものであること、上記仮差押執行に当たり同執行官は本件物件を債務者である清和工業株式会社に保管させた上その使用を許可したこと、清和工業株式会社と有限会社セイワ工業の代表者はいずれも東正彦であり、当時本店所在地も同じ上記執行場所であるし、会社の目的も共通であったこと(清和工業株式会社は昭和六二年八月六日解散)、東正彦は上記仮差押執行の日から仮処分執行の日までの間に、本件物件が設置されている工場の門柱看板を清和工業株式会社から有限会社セイワ工業に取り替えたこと、同人は昭和六二年八月六日から有限会社セイワ工業が本件物件を使用して営業している旨執行官に述べ、同執行官も有限会社セイワ工業が本件物件を占有しているものと認めたことがそれぞれ認められる。

上記事実関係の下においては、清和工業株式会社と有限会社セイワ工業との間の同一性の有無にかかわりなく、本件物件に関する上記仮差押と執行官保管仮処分との間に抵触矛盾はないと解されるのであり、保全処分の相対的効力により物件の占有移転が仮差押債権者に対抗できないのにとどまり、仮差押えと仮処分との間に本案事件執行の際の優劣関係を認めれば足る(実体関係の存否が争われることがありうることは当然である。)ものと解される。

したがって、本件物件の仮処分執行は、執行不能とすべきではなく、執行を実施すべきものである。

よって、本件異議申立ては理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 堀口武彦)

〈以下省略〉

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